第3章 初めての夜と、それから
「いつも同じじゃ、つまらないでしょ」
夜伽をするにあたり、日によって、イルミの要求は異なった。
今日は甘えて。今日はワガママに。今日はしとやかに。今日は・・・。
そのたびに、私はそれに応えた。
無理をせずとも、イルミが望むままに体が動き、滑らかに言葉を発することができた。
イルミと行為した回数は増えていき、 それに反比例するかのように、私は次第に生活全般への興味、関心を失っていった。
ある時、廊下でゼノおじいちゃんとすれ違った。
おじいちゃんは、私を呼び止めて 「 ミモザ、 お前さんは、今、幸せか?」 と尋ねてきた。
私が「わからない」と答えると、おじいちゃんは、深いため息をついた。
「わしは、孫たちにはそれぞれ幸せになってほしいと思っておる。イルミにも、 ミモザ にもな。しかし最近のイルミがしておることは・・・度が過ぎているように思え てならんのじゃ。イルミには、わしから言っておこう」
私は、おじいちゃんの言っていることが理解できなかったけれど、その言葉は心に残った。
思えば、あれ以降、部屋から出ることを禁じられた気がする。
イルミは言うのだ。
「ゼノじいたちにいらない心配をかけないためだよ。 ミモザ だって、じいさんに気苦労が増えるのは嫌だろ?」
私は頷いた。
キルアくんが出て行ったということは、イルミから聞いた。
でも、何故だろう。
ゾルディック家から飛び出したという、そのキルアくんが、今目の前にいる。