第3章 初めての夜と、それから
「ん・・・イルミさん、イルミさんてば」
「ミモザ、前々から思ってたけど、さん付けと敬語、やめてもらえる?なんか、他人行儀なんだよね」
「・・・わかったよ。じゃあ、イルミ。真ん中に行ってはどう?」
イルミの部屋のキングサイズのベッドの端に、私たちはいた。 薄い掛け布団を通じてお互いの体温が届く距離で横になっている。
だらりとしたスウェットから覗くイルミの鎖骨が妙になまめかしく見え、私は唾を飲みこんだ。
「だって、ミモザが真ん中に来てくれないから」
「くっついて寝る理由はないんだけど。私の念能力発動するには、指先が相手の体に触れてたらオッケーなんだから。ほら、手を伸ばして真ん中に寝て」
「わかったよ。にしても惜しいな。せっかくそんな色気のある恰好してるのに」
「こ、これは、おばさまが、今夜はこれを着なさいってすすめるから・・・!」
私は普段と違った、胸元の大きく開いた真っ白なネグリジェを着ていた。
夕方、キキョウおばさまがうきうきした様子で部屋を訪ねてきて、クローゼットの中からこれを 引っ張り出したのだ。
通販カタログを見て一目惚れして購入したけれど、実用的でないと思い、奥にしまっていたものだった。
「恥ずかしくなったから、着替えてくる!」
そう言い放ち、ベッドを出ようとしたところ、
「待って」
腕をつかまれ、イルミの胸に引き寄せられた。
「きれいだよ。すごく似合ってる」
耳元で囁かれ、一気に顔が熱くなった。