第10章 ターゲット(イルミ/吸血鬼パロ)
「…血が欲しいって、どういう事?」
もしかしたら私と婚姻関係を結んで、うちの財閥と繋がりが欲しいって意味かと思ったんだけど 知らないフリして聞いてみた。
そうしたらその人はこう言った。
「俺は吸血鬼、だからお前の血が欲しい」
目を見開いてその人、…人じゃないんだけど、その彼を改めて見つめた。
あまりに自然と似合っていたから気付かなかったけど、よく見たら黒いマントを纏っていて、その下にはキッチリとした白いシャツに白いスカーフをしていて。
手には白い手袋までしてて、私の想像上の いかにもって感じの吸血鬼らしい格好をしてた。
何より美しいその容姿に 私は案外冷静に本当に吸血鬼なんだって信じる事が出来た。
「血が欲しいって…私は血を吸われて死んじゃうの?」
「そ、リネルは物分りがいいね」
そういうとその彼はふわりと、横になったままの私に身体を被せてきた。
首筋に顔を寄せられると、彼からは嗅いだこともないような甘美な良い香りがして私はふと目を瞑った。
私の本能が言ってる、抵抗しても逃げようとしても無駄だって。だからそのまま大人しくしていた。
「っ…、」
想像していたものとは違う感触が首筋に走った。
私が少し目を開いて見て見れば、首筋に舌を這わせられている事に気付いた。
舌先を器用に上下させながら、私の顔色を伺っている彼の目と目が合って、私は小さな声で彼に聞いた。
「…噛まないの?」
「首に噛み付くだけじゃつまらないからね、まぁそういう風にがっつくヤツもいるけど」
「じゃあ、貴方はどうやって血を吸うの?」
「…他に方法はいくらでもある」
そういうと彼は私の寝着の胸元についた紐をゆるめてきた。
これから私は殺されるはずなのに、彼の高い鼻筋と大きな瞳を見ていると不思議と恐怖を感じなかった。
次に彼は私の手を取って、私の人差し指をゆっくり口に含んで、見せつけるように舌先で舐め上げた。
その動作が何だがあまりに官能的に見えて、私はただ それに見とれていたと思う。
「…痛っ、」
ぼうっと彼の舌先ばかりを見ていたら、急に指先に刺すような痛みが走った。
流れる血を味わうように私の指先を口に咥えるその姿を見て、指先を噛み切られたんだと気付いた。