第9章 お仕置き(イルミ/弟子/鬼畜/微甘)
「後ろ向いて」
「はい」
言われるままに後ろを向くと急に背中が外気に触れ、リネルは目を見開いてイルミの方を振り向いた。
服の上着の裾を肩が見えるまでに捲り上げられており、リネルは驚きの声を出した。
「え?!な、なんですかっ?!?」
「何って手当してんでしょ、背中にも当たってる」
「え!?やっ、いい!いい!大丈夫です!!大丈夫ですから!!!」
「何照れてんの?リネルの身体なんか見たって俺微塵も興奮したりしないから心配しなくていいよ」
「…いや、…その、……………、」
そこまではっきり言われると一人舞い上がる自分が恥ずかしく馬鹿みたいに思え、リネルは大人しく前を向いた。
その間も背中に触れる手の感触やピリッとした弱い痛みに身体がピクッと震えるのがわかり、リネルは真っ赤になった顔を下に向けていた。
「…リネルって色白なんだね」
「…えっ、?!…」
「訓練続きで出てる部分は多少焼けてきたけどね、背中は真っ白」
「そ、…そうですか、ね…」
素なのかリネルをからかっているのかわからないが、このタイミングでそんな事を言われるとますます身体が緊張して熱を持つのがわかる。
心臓もばくばくと音を立て始め、リネルは早く手当てが終わるよう祈る思いだった。
「はい、おしまい」
「…は、はい。…ありがとう、ございました…」
スッと戻された服の感触に安心を覚え、リネルはふっと振り返ってイルミに礼を述べた。
ふぅっと息をつくと、少しだけ顔の熱が逃げて行くような気がした。
イルミはそんなリネルの顔をまじまじと見ると、リネルの顎に手を添えて少し顔を近付けて言った。
「…リネル、顔 真っ赤だよ」
「えぇっ?!いや、…これは、…」
「傷の手当てくらいで何想像してんの?」
「やっ!別に、っ…何も…」
真っ赤な顔のままイルミから逃れようと後ろにずりずり下がるリネルの様子に、イルミは手のひらにもう一方の手をぽんと打ってから言った。
「最近リネルにやる気がない訳がわかった」
「えっ…?!?!」
「欲求不満なんでしょ」