第9章 お仕置き(イルミ/弟子/鬼畜/微甘)
「もういい、今日はおしまい」
「はい…ありがとうございました…」
「あ、寝る前に俺の部屋来てね」
「え?!……はい…」
それだけ言うとイルミはくるりと振り返りその場を去った。
リネルはイルミの後ろ姿を見ながら、溜息まじりにポツリと呟いた。
「はぁー…、今日は練何時間かな、、やだなもう…」
リネルは 食事と入浴を終えてから言われた通りイルミの部屋へ向かった。
「失礼しまーす…」
「入って」
諦めたような顔のリネルが部屋へ入ると、イルミは自分が腰掛けていたソファを指差し言った。
「座って」
「え?」
「聞こえなかった?ここ、座って」
普段、座れなどと促される事はないのでとっさに聞き返してしまったがリネルは言われるままにイルミの隣にちょこんと腰掛けた。
「……えぇっ…、な!?」
「顔の近くで大声出さないでよ、うるさいから」
気付くと顔をイルミの両手に包まれ、じっと見つめられており、急な展開にリネルは自分の顔が熱を持つのを感じていた。
今日はこれから睡眠を削っての練の訓練ではなかったのか?!
構うことなくどんどんリネルに綺麗な顔を近づけてくるイルミに戸惑い、リネルはつい目をきゅっと瞑った。
「…っ…痛っ…」
「じっとしててよ」
ツンと鼻につく消毒薬の匂いと頬にピリッと走る痛みに目を開くと、明らかに傷の手当てをしている様子のイルミが目に止まる。
リネルは変な勘違いをした自分が恥ずかしくなり、イルミから目線を外して染みる消毒の痛みに耐えながらイルミに言った。
「今日は、どうしたんですか…」
「どうって?」
「こんな事してくれるの、…初めてですよ」
「今日は念を込めた針に触れてるからね、リネルじゃまだまだ回復遅いし一応女だから跡残っても嫌でしょ」
「…すみません、」
やる気がないと指摘されたのにも関わらず、こうしてわざわざ傷の手当てをしてくれるイルミに申し訳ない思いが募り、リネルは両手の拳をきゅっと握り下を向いていた。