第7章 運命(イルミ/クロロ/従姉妹/妊娠/エロなし)
見たことのない黒いスーツに額に包帯を巻いた男がスッと立ち上がるとリネルの前まで来て、片手を差し出した。
「クロロ=ルシルフルと言います、どうぞよろしく」
「…リネルと申します、よろしくお願いします…」
リネルは反射的に挨拶を返し、差し出された手に自分の手を重ねた。
クロロと名乗ったその男はこの重苦しい雰囲気には不似合いな爽やかな笑顔をリネルに向けた。
「イルミの従姉妹だって聞いてたからどんな子かと思ってたけど、君どことなく似てるねイルミに」
「そう、ですか?」
急に親しげな口調で話してくるクロロを訝しげな顔で見ていると、イルミが言い訳のように口を挟んできた。
「リネルは母方の従姉妹で、俺は思い切り母親似だしね」
「ふ、なるほど」
くいっと口角を上げるクロロが、イルミに顔を向けて言った。
「…本当にいいんだな?イルミ」
「うん」
「…え、…?」
二人のやり取りについていけないリネルはイルミの前まで足を急がせる。
はっきり言って嫌な予感しかしない。
ドキドキと不安を告げる自分の心臓の高鳴る音をかきけすようにリネルは声をあげた。
「イルミ、何?どういうこと?今日は話し合いするんじゃなかったの?!クロロさんは一体…」
「なんだイルミ、俺の事ちゃんと話してないのか?」
いつの間にか音もなく真後ろに立っていたクロロがリネルの両肩にトンと手を乗せてくる。
その感触にリネルはビクッと身体を震わせ振り返ると、爽やかな笑顔の割には燃えるようにギラギラした目をしたクロロと目が合った。
困惑しているリネルにイルミが言い放った。
「クロロにさ、頼んだんだリネルの手術」
「え、………」
「前も言ったけど何が何でも堕ろしてもらわないと困るからね、お腹の中の「それ」」
「う、…嘘で、しょ…」
クロロは、唇を震わせイルミを見るリネルのお腹を後ろから抱くようにそっと両手を回してくる。
気持ちの悪い程に優しく撫でられるとリネルは、思い切りクロロの手を掴んだ。