第4章 欲情(イルミ/メイド)
ペコッと頭をさげたリネルがいそいそとイルミの近くで膝を降り、薬箱から包帯や消毒液などを手際良く準備する。
「服を脱いでいただけますか?」
「ん」
言われるままに服を脱ぐと、リネルはまだ血が出ている傷口をぎゅっと抑えてからテキパキと処置を施して言った。
「…終わりです。
鋭い傷なので出血は多いですが、傷自体はそれほど深くはなさそうでよかったです。でもしばらくは安静になさってくださいね」
「わかってる」
口元だけをにこりと曲げてからリネルは薬箱を片付け立ち上がった。
「では私はこれで、失礼致します」
「待ってよ」
急に呼び止められイルミに腕を掴まれたリネルは驚き少し目を見開いた。
「痛いんだけど」
「え、あ、…そうですね、しばらくは痛むかとは思いますが…どうしてもお辛ければ鎮痛剤を用意しますので仰っていただければ…」
「いいよ、そういうのは」
「え、…では、…?」
不思議そうな顔をするリネルの腕をさらに引き寄せるとリネルは体制を崩してイルミの膝の上に転ぶような格好になった。
「し、失礼致しました!」
「ねぇ、痛いし苛々するしさ、ヤらせてよ」
「…え……?」
上から聞こえた信じられない言葉にイルミの顔を見返すリネルが慌てた声で言った。
「な、何を…何をおっしゃいますか…っ…」
「聞こえなかった?ヤらせてって言ったの」
「な、…だ、ダメです!そんな事…っ、シルバ様に知れたら…」
「ま、お前は殺されるだろうね。俺はしばらく独房いきってとこかな」
「なら…や、やめて下さい。離して下さい!」
「うるさいな」
イルミはリネルの顔を掴むとぐいっと引き寄せ顔を近付け、感情の籠らない目を向けた。
「勘違いしないでよ、これは命令。お前に拒否権なんてないんだけど」
「…でもっ……」
「どうしても抵抗するって言うんなら殺すよ、ここで。別にメイドの1人いなくなったってなんでもないしね」
「…そんなっ……」
「わかったら大人してしててよ」