第19章 ハニートラップ (イルミ/妹)
3時間後、リネルは再び屋敷内の密室にいた。目の前には腕を組んでいるイルミの姿があった。
「どうだった、鬼ごっこ」
「いつも通り。…キルアの1人勝ち」
イルミは感心するようにキルアを一言褒めた後、続きをはじめるとリネルに告げた。
「次はリネルがオレを殺害対象として誘惑してみて」
「うん、わかった」
「殺れると思ったら本気できていいよ、じゃないと意味ないし」
「はい」
これは暗殺術の訓練の一環、真剣に取り組まねば後々泣きを見るのは自分である。
リネルは気配を消し一気に表情を殺した、そしてイルミに冷たい目を向けながらゆっくりと近付いていった。
「そんな顔してたら誰だって警戒するし引っかかるのは相当の女好きかバカだけだよ」
「ん、…そっか」
「もう少し表情は緩めて」
「はい…」
仕切り直すように下を向いて一度深く息を吐いた後、顔を上げた。
イルミを見ながら この兄もハニートラップを仕事で実際に使う時は普段の表情を崩し女性を甘く誘う顔を見せるのかと想像すると違和感を通り越し嫌悪感すら感じてしまう。
そんな事を考えながらリネルは両手をそっとイルミの胸元に伸ばし、じっと長身な兄の顔を見上げた。