第10章 変わる環境と気持ち
ボロボロになった体に、
誰も目を向けようとはせず。
関わりたくない
そう、言われてるみたいで。
「…俺は!!」
「翔?どこにいるの?」
何かに遮られ、
言葉が途切れる。
現れたのは母親らしき人の姿
「こんな所にいたのね
みんなで探してたのよ?」
「ごめんなさい」
「…あら。可愛い子ね」
女の人は私に近づいてきた。
そしてそっと手を伸ばしてくる
「触らないで!!」
手のひらを叩くと、
女の人は驚いた顔で
手を引っ込める。
「偽善者」
目に涙をため、
女の人を見つめる。
「母さん、帰ろう」
「…。」
女の人は動こうとはしなかった
何か、葛藤してるみたい
「帰れ。偽善者なんか帰れ
私は偽物の気持ちなんか要らない」
人は表だけで優しくする。
本当は、好感が欲しいだけ
本当は、周りに合わせてるだけ
人の気持ちなんて、
所詮はちっぽけでくだらない
「…どうして泣くの?
本当は辛いのに、意地張って」
「泣いて、なんかっ…」
女の人は、
勢い良く私を抱きしめた。
それは暖かくて優しかった
「…なんで…。」
「…っ、助けて…、
もう、やだよぉ…痛いよ…」
これが、咲和さんとの初めての出会い