第10章 変わる環境と気持ち
いつからこうなったのか、
私には分からない。
お母さんが居なくなって、
お父さんは朝早くから夜遅くまで
仕事してて兄は疲れきってて
病院に運ばれ入院した。
兄は暴力を振るった、と
警察に捕まり、
お父さんは育児放棄と捕まった
『ちゃん…、大丈夫?』
「…うんっ、平気だよ!
ほら!こんなにお菓子あるし!
私は全然笑えるよ!ね?」
なのに。
なのになんで、
目から涙がこぼれてるの。
「…大丈夫なんだよ、ホントだよ」
俯いて涙を隠す
「そのアザは?」
ぎゅ、と誰かに掴まれて
慌ててその腕を払おうとする
けれど強くてでも痛くはなくて
「なんで大丈夫って言うの。
なんで平気なんて嘘つくの
怖かったんでしょ?辛かったんでしょ
ならどうして助けてって言わないの」
そこに居たのは、
手首に包帯巻いた
まだ小学生の翔くんの姿。
小学生だと言うのに、
彼は大人びていて
でも少しやせ細っていて。
「…だって、」
「…だって?」
「だって、誰も助けてくれなかった
泣いてお願いしたのに!!
痛いって、怖いのって!
なのに誰も信じてくれなかったもん!
誰も……、助けてくれなかった…」