第9章 想い
智side
本当は、壊れてしまえばいい
そう思っていた。
苦しいこの気持ちも、
きっと取れるって思ったから
でも、母さんが戻るって
彼女から聞いたとき。
胸の苦しみは、
一瞬足りとも取れることはなかった
そしてやっと気づいた。
好きなんだ、って。
ガンッ
物音がして、
リビングに行くと
「たいへん!
和也兄ちゃんが怒ってる!」
裕也くんが慌てて
泣きそうな顔でそう言ってきた
「和…?どうしたの」
「なんの音だよ」
「喧嘩ぁ?」
「…どうした?」
みんなリビングへ集まった
乱れた前髪が、
顔を覆い上手く表情が見えない
でも確かなのは、
和は泣いてるってことぐらい
「なんかあったのか」
潤が傍に寄ると、
和は潤の両肩を掴んだ
「俺は!!俺はな!」
涙でいっぱいの目を見た。
「……こんなの、違う…
こうじゃない…違うよ…!!」
「…どうしたんだよ、」
「和?ちゃんと話して」
雅紀も駆け寄る。
後ろで翔ちゃんと彼女が
唖然として見ていた