第8章 精神状態
何も言えず、
彼の隣に座ると
「…なあ、頼むからさ」
「…うん」
「お母さん…、だけは
俺らの前からいなくならないで」
ギュッと抱きしめられて。
思わず抱きしめ返した。
潤くんは三つ子で、
兄弟でも末っ子で
上の兄達がずっと羨ましかったんだ
自分だけ父親の顔も思い出も、
何も覚えていなくて
「居なくならないよ、大丈夫だよ」
「…ほんと?」
「うん。約束するから」
すると潤くんは、
手に力を強く込めた。
「ありがとう」
潤くんがニコッと微笑んだ。
みんな、自然と
笑えるようになってくれたら。
まさか。
突然、皆とのお別れがあるなんて
予想してるわけもなく。
素直にそう願っていた……。