第6章 帰宅
「いいよ、大丈夫。
だから泣かなくていいんだよ」
うん、と頷いた潤くんは
家の中へと戻って行った。
震えていた。
泣いていた。
みんな、みんな。
何かをたくさん抱えてるのに、
私は何も出来ないでいる
「お姉ちゃん、早くゲームしよや!」
忠義くんが玄関のドアから顔を出す。
「…お、姉ちゃん泣いてるん?」
「え?」
忠義くんが歩み寄って来て、
そっと手を伸ばす。
触れられた頬が、
濡れていたのに気づいた
「あかんで、泣いたら。
オカンなら笑ってなアカンねんで
それでも辛い時は、俺が慰めたるから」
な、と笑う忠義くん
「で、でもね…お姉ちゃん……っ」
駄目だ、
小学生の前で弱音なんて。
「もーう、お姉ちゃん!
可愛い顔が台無しやんかぁ!」
こんなに母親代理が大変なんて、
まったく思っていなかったんだ。