第4章 初対面
ーー忠義side
俺は大人がこわい。
常に笑って誤魔化してれば事は済む。
お姉ちゃんに出会って、
何か変わる気がしたけどよく分からない。
怯える祐也を見たら、
兄ちゃんあかんなぁって思った。
「ただよし兄ちゃん、ぼくね」
「どないしてん」
「…ぱぱに会いたい」
祐也のオトンは凄く優しい人だった
きっと面倒なはずの祐也を、
「あんな女に育てられたらたまらんわ」って
祐也を抱えて東京に行ったんだ。
自分が病気で死ぬまで、祐也を
大切に育ててくれたんやから羨ましい。
オカンは「あんな腐れ男のせいで」って
すべてあのオトンのせいにしてた
「ぱぱな、会えへんねん」
「……ぼくね、さみしいよ…」
辛いときも大丈夫って言ってやりたいのに
今の俺も辛いから、
大丈夫なんて言葉は簡単には出なかった。
ガチャ
「おーい、そこのガキ」
また、怖い人の声
「なんやねん。兄ちゃん」
「中に入りなさいよ
お母さん帰るまで中で待ってれば」
ぶっきらぼうな言い方やな
でも祐也の手は震えてる。
「ええで、気遣いなんか。
外で待ってる方がなんぼええ」
早く帰って来い。
兄ちゃん、お姉ちゃん
「さっきのはごめん、
だから中に入ってよ…」
「そういうんちゃうねん
祐也が、怯えてるから外におんねん
俺だけやったら我慢できるもん」
きっと、たぶんね
弟の面倒、任されてんもん
ほっぽって逃げるわけにはいかへんやん
「じゃあ、お兄ちゃんも外に居ようかな」
「はぁあ?なんでそうなんねん!」
と立ち上がると、
祐也が服の裾をぐいっと掴んだ。
向くとポロポロ泣いていた。
「ぱぱ死んだの…?」
「―――――知らへん、のか?」
泣いていた理由は、
そういうのじゃなかった
祐也は知らなかった
知らないんじゃない、
分かってないんだ
もうオトンに会えへんの。