第12章 自覚
「もう、ええやろ…?
あいつらを開放したってや」
苦しそうな声で呟いた。
『手放してどないするん
うちに水商売やれ言うんか
ああ。枕仕事か?やらんで。
そんなきったない事するぐらいなら
男から巻き上げた方がマシや』
そんなことを平気で言ってのける女
それでも隆平くんは
ただ、涙をこらえていた。
最低なのは分かってるのに。
彼にとっては世界に一人の、
唯一の母親、なんだ…
「…忠義と祐也はちゃうやろ、」
『まあ。せやな?、』
え?…。
『施設から引き取っただけやし
祐也に関しては前彼の連れ子で、
勝手に次の男が連れてったんやしな』
「…実質、俺しかほんまの子やないやろ」
そんな会話のあと、
2人は止めてあった高級車に乗った。
これはみんなに言うべきなのかな。
でも話したところで、
俺らに隆平くん達の家族問題を
どうにかしてやれるのか?
…できるわけ無い。
お金でなんとかできるほど、
沢山は持ってなんかないし、
地位も権力もあるわけがなくって。
追いかけたいのに、
足に鉛でも縛り付けられたように
ピクリとも動かなかった。
…ちゃんなら、
このときどうしていたんだろう。