第12章 自覚
「よし!俺の勝ちな!」
「お前強すぎだって」
学校の帰り道。
ケータイのゲームで、
負けた方が奢るという賭けをして
予想通りの和也の勝ちに、
むすっと膨れる潤の頬。
「ねえ、」
ニコニコ笑ってた和也が、
その優しい顔つきで
最近の出来事を振り返った
「俺らさ、素直にならないと」
「な、に?突然。」
「別に。なんとなくですよー」
無駄にもこもこ膨れたカバンを
左に右にと持ち替えて
重そうに歩く和也に
やっと、雅紀の言葉を思い出す。
「潤はさ、翔兄ちゃんみたいに
頭がいいし運動も同じぐらいできたじゃん」
「…う、ん…?そうかな」
ふふ、と笑いながら
「そうなんですって!」と
突っ込む和也。
「潤は家にいない時期が長いから
俺らより家族の思い出がないから
ちょっと卑屈になってるけどさ」
「…うん。」
「…母さんも父さんも。
結局、帰ってきますよ」
そうか。
そうなんだ。
納得する自分が居て、
理由もなく頷いた
「…てかその膨らんだカバンなに」
「俺のモテ具合」
「腹立つから蹴っていいか」