第12章 自覚
「丸山隆平です!
しばらくよろしくお願いします!」
緊張ガチガチで、
教壇に立った
転校初日。
クラスのみんなの前、
やっぱりドキドキしてて
大きく深呼吸をした。
休み時間
聞いてたもう一人の関西の子が
「僕、安田章大!」
にひっ、と
無邪気に笑う彼の笑顔に
ついつい嬉しくなって。
「よろしく!!」
俺も思いきり声張って返事した。
それから、
転校した理由も
ぜんぶ、話した
隠しとっても意味ないしな
「…そうなんや、お母さんがな」
「下に2人弟がおんねん!
まだ小学生やけどな。
俺が兄ちゃんやっとらな、泣いてまうから」
離れ離れになるのがイヤだ。
祐也が大泣きしたあの日
お父さんに会いたい
そう泣いたあの日。
笑ってるけど、
本当は辛いって忠義も思っとる。
2人が泣いた、あの日。
「…お母さんが戻って来たら、
俺らはどうなんねやろ。
前みたいになんのかな。離れるんかな」
「…マル、」
「このまま、このまま、
居なくなれば幸せになれるんかな」
俺がおらんとあかんねん。
やないと。
忠義も祐也も、
泣いてまうから。
潰れてしまうから……。