第11章 10月10日限定彼女(銀八side R-18)
口をつぐんだ(パフェに集中しているように見えたと思う)俺に、先生が思いがけないことを言った。
「そうそう。プレゼント用意してあるの」
「へっ」
「誕生日なんでしょ、今日?」
「そ、そうですけど」
「文庫本だから、そんなに高価なプレゼントじゃないんだけどね」
そう言って先生は俺に紙包みを渡した。
「坂田くんに、現代小説勧めるのって初めてかもね。勉強が苦手な、でもすごく素敵な高校生の男の子の話」
「……」
先生がそういう、どちらかというと軽めの小説を勧めるのは意外だった。
「最後の小学生時代の話は、センター試験に出題されたこともあるのよ」
ああ、そういうことなら先生が勧めるのもわかる。
「開けていいですか?」
「もちろん」
パフェを食べる手を止め、紙包みを開く。ポップな表紙の本だ。
「この主人公、勉強ができないって開き直ってるんだけど、私の中では、ちょっと坂田くんに似てる気がするの」
えーっと、それは俺をほめてくれてるとみていいんだろうか。
でも、パラパラとページをめくっていくだけで、あたたかい気持ちがじわじわ胸に広がってくる。
俺のことを思い浮かべて、先生が選んでくれた本。
好きな人からのプレゼントって、こんなにあたたかいものなのか。
「あ、ありがとうございます。家でゆっくり読ませてもらいます」
「うん。……あ、坂田くん」
「え?」
顔を上げると、先生の華奢な指が近づいてきた。
「クリームついてる」
細い指が口元が軽くなでていく。
そしてそのクリームは、先生自身の舌になめとられた。
無意識の行動なんだろうけど、目の前の男をそそるには十分すぎる。
「ねえ」
「え?」
「早く、2人だけになれるところに行きたい」
「……すごい。直球ね」
俺が真っ直ぐな目で見つめると、先生は顔を赤くしながら目をそらした。
いつもサディスティックなくせに、意外に直球に弱いみたいだ。