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【銀魂/3Z】国語教師の作り方!

第9章 風は秋色(銀八side)


俺の動揺をよそに、辰馬は話し続ける。
「書類を破られる瞬間、指輪が目に入っての。これが女子が騒いでた指輪か、と思っちょった」
「根も葉もない、単なる女子の噂話なんじゃないのか」
俺はそう言ったが、ほとんど、そうあってくれ、という願望に近かった。
「そうかもしれん。お前も詳しいことは知らんのじゃな」
先生に婚約者がいるだなんて、そんな話は知らない。

俺が先生から直接聞いたのは、昔の男からもらったものだということと、寄ってくる男を本気にさせないためのお守りだということ。
そしてそれはたぶん、愛里先生にとって、寄ってくる男に深入りしないための戒めでもある、と俺はふんでいる。
その昔の男が先生の心に住まっている限り、どんな男も先生の心に入っていけやしない。
先生にとって特別な生徒なのかもしれない、とうぬぼれているだけで、せいぜい犬っころみたいなモンとしか思われていない俺なんか、先生の心の入り口にも立たせてもらえていないのかもしれない。

「でも、婚約指輪なら左手にするだろ」
掠れた声でそう言うのがやっとだった。
辰馬にではなくて、むしろ俺自身に言っているようなものだ。
「確かにそうじゃな。全蔵あたりにインタビューさせたらおもしろい校内新聞になりそうじゃ」
そう言いながらすたすた歩いて行く辰馬。
校内新聞?そんな媒体で先生の婚約者のことが伝えられるなんてことがあったら、俺、立ち直れるんだろうか。
そんなことを考えながら歩いて行くと、辰馬との距離がどんどん開いてしまう。
慌てて小走りで追いつく。
これから怒られに行く奴の方が、付き添っている奴より足の運びが軽いなんて、皮肉な展開だ。

だが、資料室に入った途端、指輪どうのなんていう話はすっ飛んだ。
そのくらい、資料室は張り詰めた空気になっていたからだ。
「先生、申し訳ありません」
腕組みをして座っている愛里先生に向かって、辰馬が深々と頭を下げた。
「……坂本くんさ、自分がしたことわかってるの?」
「すいません」
「すいませんで済むような問題じゃない」
愛里先生はビシッと切り捨てた。
その言葉の鋭さに、辰馬も、一歩後ろにいる俺も、圧倒される。
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