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【銀魂/3Z】国語教師の作り方!

第9章 風は秋色(銀八side)


それからしばらくの間、いちご牛乳を飲むたびに、俺は愛里先生のストローくわえたままの上目遣いを思い出してニヤニヤしていた。
(ついでに、先生が俺のをくわえているという想像で、何回か抜いた。正直、この想像力をまともな方向に発揮できれば、俺は世界に名を残せそうな気がする。うん間違いない)

だから、10月の文化祭についてのLHRの最中も、いちご牛乳を飲みながら、考えていたのは愛里先生のことだった。
そもそも俺は、文化祭なんてものに興味がない。
去年はそう、学校サボって、準備日・当日・当日・代休・代休、ずーっとバイトしてた。
おかげで結構稼げた記憶がある。
今年はクラスで何かするみたいだけど、俺に仕事が割り振られているわけでもなし、やっぱりダルいよな。

「おい金八」
「……」
「金八」
「……うっせーよ、誰が金八だよ。俺は『人』っていう字の成り立ちを教えたりしねえよ!」
いつの間にか、隣の席に辰馬が座っていた。
「人という字は人と人が支え合って出来てるもんじゃき」
「うん、まずは人の名前覚えてから、偉そうなこと言ってくれる?」
「お前、わしらに協力してくれんか」
「お前に協力すると、ロクなことにならねえだろ」
「別に、文化祭で剣道部の手伝いをしろちゅうことではないぜよ」
「当たり前だ。そんな契約してねえだろ」
「中学時代は、剣道部が他校呼んで親善試合してたじゃろが。そういう企画はないんか」
「あっても俺は出ねえよ」

あれは……、あれは、思い返すだけで、胸がジリジリ焼かれるような気がする。
俺は、ただ松陽先生に試合を見せたかっただけなのに。
松陽先生が来る前に、ガラの悪い夜兎中の奴らが暴れて、乱闘騒ぎになった。
俺も必死で止めたが、夜兎中の挑発に乗ってつっかかっていった仲間の目に、相手の竹刀がまともに当たってしまった。
俺がもっとちゃんと挑発に乗るなと諭していれば。
俺が防具もつけていなかったあいつをもっとちゃんと止めていれば。
乱闘がここまでの哀しみの幕開けとなることはなかったのに。

今でも時々思う。
俺の目が見えなくなればよかった、と。
そうしたら、松陽先生と、あいつの家に見舞いに行くこともなかったのに。
そうしたら、松陽先生が、俺をかばって命を落とすなんてことも、きっとなかった――。
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