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【銀魂/3Z】国語教師の作り方!

第9章 風は秋色(銀八side)


それにしても、さっきのゴウさんの言葉。
同じようなセリフが『こころ』の最初の方にもあった気がする。俺はページをめくった。

「先生の宅(うち)は夫婦と下女だけであった。行くたびに大抵はひそりとしていた。高い笑い声などの聞こえる試しはまるでなかった。或る時は宅の中にいるものは先生と私だけのような気がした。
『子供でもあると好いんですがね』と奥さんは私の方を向いていった。私は『そうですな』と答えた。しかし私の心には何の同情も起らなかった。子供を持った事のないその時の私は、子供をただ蒼蠅(うるさ)いもののように考えていた。」

ここだ。これだ。
この後にある、「子供はいつまで経ったってできっこないよ」「天罰だからさ」という言葉が伏線になっているから、つい読み飛ばしてしまったけど、「子供を持った事のないその時の私は」という言い方は、さっきのゴウさんと同じように、「今は子供を持っている」という前提あっての表現だ。
そうか。そういうことか。
愛里先生がくれた、「書いてない経験を読み取る」というヒント。ハッキリは書いてないけど、確かにこの語り手の青年には、今、子供がいるのだ。
さらに俺がページを繰っていくと、こんな場面も目についた。

「もしそれが詐りでなかったならば、(実際それは詐りとは思えなかったが)、今までの奥さんの訴えは感傷(センチメント)を玩ぶためにとくに私を相手に拵えた、徒らな女性の遊戯と取れない事もなかった。もっともその時の私には奥さんをそれほど批評的に見る気は起らなかった。」

ここもそうだ。「その時の」青年にはそう見えなかったけど、「今の」青年には「徒な女性の遊戯」とも取れるということだ。
たぶん、恋愛経験をするかなんかして、女性に対して批評的な目が養われたということなんじゃないか。
確かに、女って、男の気を引くためには平気で話を盛るよな……。
それは俺も経験あるから、わかるよ……。
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