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【銀魂/3Z】国語教師の作り方!

第7章 夏の終わりのエトセトラ(銀八side)


そう言ってコーヒーをまた一口飲む先生に、俺は言った。
「これ授業でやってくださいよ!絶対おもしろいって!」
「でも、教科書に載っている『こころ』は、歌留多取りからKが自殺するまでなのよ。この場面は載ってないの」
「だったら、教科書じゃなくって、文庫本を教科書にすればいいじゃん」
「でも、教科書じゃない範囲を扱ったら……」
俺は首をかしげた。
一学期の最初の授業で、あんなにおもしろい授業を見せてくれて、俺を魅了した先生が、教科書がどうの、というのは違和感があった。
「何か、先生らしくないですね」
その俺の言葉に、先生は表情を変えた。
「私らしい、って?」
「先生は、教科書に載ってない『千羽鶴』で、小説のおもしろさを教えてくれたでしょ?普通の教科書では絶対出会えないおもしろさを教えてくれた先生が、教科書にこだわるなんて、おかしいですよ」
「……」
「そもそも現代文なんて、大学入試でだって、習った文章が出るわけじゃないし、教科書にこだわるのって意味ありますか?」
「……」
「少なくとも、俺は、今先生が話してくれたことの方が、『習ってよかったな』って、一生心に残ると思います」
「……」
生意気な俺の言葉を、先生は最後まで聞いてくれていた。
「……すいません、俺、偉そうなことを言って。もしかして、教科書に沿って授業をやらなくちゃいけないっていう決まりがあるんですか?」
「ううん、そこまでは」
「じゃあ、そういうクレームがきたとか」
「まあ、うるさいことを言う保護者もいることはいるけどね」
「……」
「でも、保護者のために授業をやっているわけじゃないしね。坂田くんの言う通りだわ」
「え?」
「教科書にこだわるより、もっと大事なことがあるわよね」
先生は再び笑顔になった。
「坂田くんに教えてもらっちゃったわね。ありがとう」

ああ、そうだよ。
この笑顔だよ。
この笑顔を見るために、俺はこの部屋に来たんだ。

俺は立ち上がると、素早く先生の隣に座った。
「先生!」
「な……、どうしたの……近いよ」
「先生に近づきたいんだもん」
「ちょっ……」
「ごほうび!」
「え?」
「ごほうびください!」
「……」
先生はちょっと困ったような顔をして、よしよし、とするように俺の髪に触れた。
これはこれで気持ちがいいけど。
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