第7章 夏の終わりのエトセトラ(銀八side)
図書館のカウンター当番を終え、鍵を閉めて、俺は国語科資料室に顔を出すことにした。
夏休みの宿題の感想文が書き終わったから、というのは口実で。
愛里先生の顔が見たいというのが本当のところだ。
……うーん、我ながら、かなり重症だよな。
「愛里先生」
ドアを開けてのぞいたが、いつもの仕事机に先生の姿が見えない。
でも電気はつけっぱなし。
ってことは、すぐ戻ってくるということだな。
先生が戻ってくるまで待っていればいいか。
そう思ってふと左手のソファに目をやった俺は、目を見張った。
ソファに横たわる先生の姿があったからだ。
「……」
そっとドアを閉め、ソファに近づく。
熟睡しているらしく、目を覚ます気配はない。
華奢なサンダルも脱ぎ、右腕を下にして身体をソファに投げ出すようにしているから、先生の身体のラインがはっきり見える。
髪の毛がソファの上に広がって、半袖のブラウスの胸元から綺麗な形の鎖骨がのぞく。
膝丈のスカートの裾が少し乱れて、すらりとした生足が、太ももの半分ぐらいまで見えてしまっている。
そんな先生の身体を上から見下ろして、俺は、
「すげぇ無防備」
と、思わずつぶやいた。
これじゃ「襲ってください」と言っているようなものだ。
もし俺が、この綺麗な脚の間に強引に膝を入れたらそのまま突っ込…ry
俺は自制心を総動員させて、向かいのソファにそっと腰をかけた。
「……」
かすかな寝息だけが聞こえる、静かな夕方の資料室。
こんな無防備な愛里先生を独占できるなんて、役得だな。
夏休みなのに夕方まで仕事しちゃって。
俺たち生徒の知らないところで仕事が山積し、疲れているのだろう。
しばらく先生の寝顔をにやにやしながら堪能したあと(まかせろ、変態の自覚はある)、俺はカバンから本を出し、先生が起きるまで待つことにした。
先生の顔を見るという当初の目的は果たされたけど。
こうやって寝顔を見ていると、やはり今度は話がしたくなる。