第1章 始まりは突然に(銀八side)
思わず目を見開き、先を読み進める。
「…
菊治はつつと立つと、呪縛で動けない人を助け起こすように、文子の肩をつかんだ。
文子の抵抗はなかった。
(問)このあと、二人はどうなったか。」
……
……
何だコレ。
俺は思わずつぶやいていた。
親子◯◯◯◯の連鎖?
そんな連鎖、どんな落ちゲーにもねェよ!!
俺は鼻血を吹きそうになりながら、恐る恐る周りを見た。
俺と同じように動揺している奴、意味が分からなくてポカンとしてる奴。
ジャンプ仲間の全蔵の方を見たが…、あいつの前髪は長すぎて表情が読めない。
とはいえ、何となく驚いている感じは伝わってきた。
そうだよ、「友情」「努力」「勝利」のジャンプラバーの俺たちに、いきなりコレはオトナすぎやしませんか。
「ハイ、読めたかな。じゃあ、みんなに聞きます。答えなくていいから、このあと二人がどうなったのか、わかる人―」
目の前の女教師は、『走れメロス』を解説しているかのようにさわやかな声で問いかけた。
教室内はざわつきながら、でも半分以上の生徒が手を挙げていた。
「うん、わかった。どうしてもわからない人、わかっている人に教えてもらってね。わかっている人、こっそり教えてあげてね。大きな声で教えると…他の先生が驚くから、やめておいたほうがいいと思う」
笑いが起こった。
「さてさて、小説の読み方で大事なのはね、『書かない』ってことなの。『書かない』のに、こうやってほとんどの人が、この二人がどうなったかわかる。これが、本当にすぐれた作家の小説です。だって、このあとどうなったか詳しく書いちゃったら、官能小説になっちゃうもんね」
またまた笑いが起きた。
つーか、言っちゃってるよね、官能小説になっちゃうって!!
俺、本当に鼻血吹きそう。