第6章 真夏の夜の夢(銀八side)
「ガッハッハッハッハッ!補習が多いから凹むなんて、お前らしくないの!」
「……」
俺は回れ右をして、いちご牛乳に向かう。じゃなかった、いちご牛乳を買いに向かう。
あーもう!
銀さん今、愛里先生の指輪見つけて、軽くブロークンハートなわけ。
銀さんもたまには、『羅生門』の下人並に、「サンチマンタリスム」に浸らしてほしいわけ。
銀さんそういう時、お前のデカい声なんて聞きたくないわけ。
「どうした!?お前、姫川先生の補習受けられると喜んどったじゃろうが!」
辰馬は大声で追いかけてくる。
あーあーもう!!
こいつ、暑さでデリカシー焼け落ちたとしか思えない。
「……てめえの声を聞いてると、不快指数が急上昇するな」
「姫川先生の補習が終わったところじゃろ?」
「……うるせえよ」
その愛里先生の指に鈍く光った指輪を見て凹んでいる、とはさすがに言えなかった。
すると、珍しく辰馬が声をひそめてこう言った。
「銀八、人助けだと思って、ちょっと『技』を貸してほしいんじゃ」
「『技』?」
なんだそれ。
女を口説くテクニックとか?
女をイかせるテクニックとか?
それより銀さん、他の男からもらった指輪をしている女を振り向かせるテクニックを教えてほしいとこなんだけど。
300円あげるから。
だが、辰馬の口から出たのは、思いもかけない言葉だった。