第21章 色のない世界(girl's side)
そんな時、海外赴任中のとある男から連絡があった。
久しぶりに一時帰国しているのだという。
大学時代の仲間数人で飲むからと誘われた。
たまには仕事のことも忘れて、かつての仲間と遊ぶのもいいかもしれない。
私は、「楽しみにしてる」とメールを返した。
楽しかった飲み会のあと、男が私にそっと言った。
「これで帰っちゃうのも寂しいんだけど」
こう言われて、何を言いたいのかわからないようなカマトトではないつもりだ。
「久しぶりに、日本の女の子とエッチしたいなーなんて」
「……」
「あ、もしかして病気とか心配?大丈夫!ちゃんとコンドームつけるからさーー」
「へぇ、少なくとも、デリカシーは海外生活で腐り落ちたみたいね」
「俺たちの間柄で、今更デリカシーのある誘い方したってしょうがないでしょ」
そうね。
正直色々ありすぎて、疲れ果ててしまったから、お酒の力を借りてでも忘れさせてくれるほどに抱いてくれる腕がほしかった。
久しぶりに煙草の味のするキスをされて、私は男の誘いに乗った。
それなのに。
触れられれば触れられるほど、銀の髪をした彼のことばかり思い出してしまう。
たった二回ホテルに一緒に行っただけなのに。
身体に刻み込まれてしまった彼の記憶。
そんなことを考えていたからだろうか。
私はいつものように、快楽を感じられないでいた。