第20章 恋心捜索願(銀八 side)
「でも!今でも指輪を外さないでいるくらい、あの先生のことが大事なんですよね?」
「え?」
先生は目を見張り、そしてしばらくして、ふっと笑った。
哀しそうな笑いだった。
「銀八くん、この指輪はあのひとからもらったものじゃないのよ。それこそあのひとなんかより、ずっと深い関係だった人からもらったものなの」
足下が崩れるような衝撃、というのはこういうことを言うのだろう。
俺はしばらくの間、口がきけなかった。
愛里先生の前からあの教師を消そうとしていた(実際に動いたことはないが、結果的に)のは、全て無駄な努力だったということになる。
あの教師がいなくなれば、先生の心にも俺の入り込む余地があると信じていたのに。
「今となっては、お守り代わりだけど」
「簡単には外すことのできないくらい、深い関係を持った人、ということですか」
「……そうね、あの頃は夢中だったわ。恋心なんて、もうその頃に置いてきてしまったかもしれない」
先生は過去形で言った。
過去形だけど、でも、その過去は先生の現在を縛っている。
たとえ万に一つでもあるかもしれない、俺との未来なんてものも、簡単に消し飛ぶくらいの重み。
先生が過去に置いてきてしまったという恋心。
俺が探し出して捕まえて、そしたら俺ともう一回、恋をしてくれるなんてことがあったらいいのに。