第20章 恋心捜索願(銀八 side)
とっつぁんが出て行き、しばらくして担任のヤマウチ先生が、パンといちご牛乳を持って入ってきた。
「腹減ったろ」
「はい……」
「食っていいぞ」
「はあ……」
俺は曖昧な返事を返した。
せっかくシノハラとあの教師がデキてる証拠を見せようと思ったのに、はぐらかされた気分だったからだ。
「あの、俺、どうなるんですか」
「まあ、学校に関係のないものを持ってきたんだから、反省文くらいは書かされるかもしれないな」
「はあ……」
取りあえず、不純異性交遊がどうのというおとがめはナシらしい。
俺がほっとしていると、ヤマウチ先生は続けた。
「しかしお前、良かったな。姫川先生が、お前の肩を持ってくれなかったら、とっくにお前は停学させられていたかもしれない」
「え……?」
「大抵、女性の先生は、こういうとき厳しい発言をすることが多いんだが、姫川先生は最初から、お前が否定している以上、それを信じて病院からの報告を待つ方がいいと言っていた。……あるいは、女のカンが働いていたのかもしれないな」
俺は思わず手にしていたパンを落としてしまった。
先生が、俺を最初から信じてくれていた。
俺の方は先生を傷つけてしまったというのに。