第20章 恋心捜索願(銀八 side)
それからしばらくの間、俺はとっつぁんと二人で無言で座っていた。
俺の方は、いつ、あの切り札を出すか、タイミングを見計らっていたといっていい。
「……俺、口から出任せなんか言ってませんよ」
「どうした?」
「証拠もあるんです」
「証拠?」
「シノハラの相手の男が誰か」
「どういうことだ?」
ごめんね、愛里先生。
先生を傷つけたいわけじゃなかったんだけど。
でも、一応、先生に先に言ったから、許してくれるよね。
俺がスマホを取り出そうとしたちょうどそのとき、面談室のドアが開き、教師が一人入ってきてとっつぁんに何事か耳打ちした。
とっつぁんは一瞬俺の方を見て、立ち上がる。
「おい、もう昼だからな。メシ、食いてえだろ」
「え……?」
「何か購買で買ってきてやるよ。何がいいか?」
「すみません……パンと、いちご牛乳がいいです」
「いちご牛乳?何だ、そんな甘ったるいモン飲みやがって」
「はあ……」
え?
あれ?
せっかく証拠をつきつけようとしたのに?