第20章 恋心捜索願(銀八 side)
「じゃあ、言わせてもらいますけど、シノハラの相手、俺は知ってます」
「何だと!?」
二人の教師が同時に叫んだ。
俺は面談室でやっと口を開いた、この教師を尻目に、とっつぁんに向かって言った。
「だって、相談受けてたんですよ。シノハラ、その相手との関係で悩んでいたみたいで」
「……」
「結構年上の相手なんですけどね」
「それは、援助交際、というやつか?」
「いや、不倫です」
「ふ、不倫だと!?」
「はい、相手の男性には、奥さんがいるみたいなんで」
「お前、口から出任せ言ってるんじゃないだろうな」
「違いますよ。何ならとっつぁん、病院でシノハラに直接聞けばいいじゃないですか」
俺はイトウという教師の青ざめた顔を横目で見た。
「そ、そうか。じゃあ、どのみちアレだな。病院に行って……」
「いや、松平先生。ここは、担任のボクが」
慌てて立ち上がる。
「そうですか。では、イトウ先生が行ってくれますか」
「はい。こいつが、口から出任せ言っているかもしれませんし」
アレ、この期に及んで、俺の言うこと信じてないの?
あんたのこと、知ってるんだよ?
ああそうか、病院に行って、シノハラと口裏を合わせようって寸法か。
シノハラ、この教師にゾッコンみたいだからな。
うまく言いくるめられて、俺とやったなんて言い出したらまずいよな。
愛里先生は信じてくれたみたいだけど。
ほんと……、愛里先生は、こんな男のどこがいいんだろう。
俺の方が……いや、俺だって真面目な人間じゃないけど、でも、少なくとも愛里先生には、こんなに一途なのに。
まあいいや。
シノハラにはちょっと悪いけど、この教師には愛里先生の前から消えてもらうことにしよう。
俺は面談室を出て行く男の後ろ姿を見ながら、暗い笑みを浮かべた。