第18章 踏んだり蹴ったり殴られたり(銀八 side)
やれやれ、と思いながら、カバンの中身を出す。
もう今週も終わりだからジャンプは読み切ったし、タバコは外じゃ吸わねえし、怒られるようなモンは持ってきてねえはずだ。
そう思った俺が一瞬油断したその時だった。
「坂田。お前、胸ポケットに何入れてる?」
松平のとっつぁんの鋭い声が飛んだ。
やべェ。
「いや、タバコとか、そういうんじゃないです」
俺は愛想笑いでごまかそうとした。
「そういうんじゃねえんなら、見せてみろ。見せられるだろ」
うう、余計まずい方向に。
「いや、あの」
俺がごにょごにょ言っていると、とっつぁんは俺の前にやってきて、竹刀で胸を突いた。
「ホラ、ここ、何か入ってるな」
「ええ、まあ」
「出せ」
「いや、あの」
「竹刀でドタマかち割られたいか?」
それって体罰どころじゃない騒ぎになると思うんですけど、と言いたかったが、本当に言ったらドタマかち割られそうだったので、黙っていた。
「出せ」
「あの」
「出せ」
押し問答の末、イライラが募ったらしきとっつぁんは、俺があっ、と思うまもなく、制服の襟をグイッとつかみ、ポケットに手を突っ込んできた。
「ん?」
タバコとは違った箱の感触に不審がるとっつぁんの迫力ある顔を間近で見ながら、俺は、やっちまった、と後悔していた。
よりによって、今日に限ってこんなことが。
反省文何枚書かされるだろうな。
「馬鹿野郎!!なんでお前が、妊娠検査薬なんて持ってるんだァァァァァ!!」
そう怒鳴りながら俺に平手打ちを食らわすとっつぁんの顔をスローモーションで眺めながら、あーあ、愛里先生の耳にも入って誤解されるだろうな、と、俺はそのことばかり心配していた。