第18章 踏んだり蹴ったり殴られたり(銀八 side)
「銀ちゃんさあ、夏うちに泊まりに来たとき、好きな人がいるって言ってたよね」
あー。
そんなこと言ったような気がしないでもない。
「その人とはどうなったの?」
「……」
何て答えていいのかわからない。
でも適当な返事で逃げられるような相手でもない。
俺は、
「絶賛片思い中」
とだけ言った。
「へ?銀ちゃんが?片思い?似合わねェェェ」
「華さんに言われなくてもわかってるよ!」
拗ねたように言うと、華さんはゴメンゴメン、と言った。
「つうか、あれからもう3ヶ月ぐらい経ってるよね?全然関係進んでないの?」
「いや……そういうわけじゃなくて」
関係は進んでるんだけど。
爛れた関係に進んじゃったっつうかね。
抜き差しならない関係性にはまり込んだっていうかね。
いや、抜き差し自体はしたんだけども……。
「一回ヤったからって彼氏ヅラするほど、俺も頭が花畑になってるわけじゃないから」
「へええ。普通だったら、銀ちゃんは一回ヤッた女に彼女ヅラされて困る側でしょ。銀ちゃんが振り回されるなんて珍しい。年上なのね?」
「うん」
「もしかして、人妻だったりする?」
あれ、これ前も聞かれたな。
俺別に、人妻好きじゃねえんだけどな。
人妻にしか勃たないのは、今日本にいねえアイツだっつうの。
「……そういうわけじゃないけど、まあ、それに似たような感じっつうか」
「そっか。つらいとこだね……でも、それでもその人のこと好きなんだ」
「うん……」
俺は愛里先生のことを思い出して、顔を赤らめながら、小さな声で言った。
「その人と一緒にいられると、すげえ幸せ」
「銀ちゃんにそんなこと言わせるなんて、すごいね、その人」
華さんは俺の顔を眺めながら、感慨深そうに言う。