第17章 人の不幸は蜜の味(銀八side)
月詠は少し驚いたような顔をして、
「お前は、自分が必要とされているなら、誰のどんな言うことでも聞くのか」
と言った。
「そういうわけじゃねえけど、俺にできることなら、できるだけしてやりたいって思うんだよ」
「じゃあ、誰かに『私とつきあって』って言われたら、つきあうのか?」
「はは。来る者拒まずだから、昔はそんなこともあったなあ。だいたいうまくいかねえけど」
「……そうか。じゃあ、誰かに『私を抱いて』って言われたら、抱けるのか?」
おお。
ずいぶん突っ込んだこと聞くじゃん、月詠ちゃん。
「あー、物理的にはね、健全な17歳男子だからね、できると思うよ。後腐れなくヤれる女ならもっとウェルカム」
「……変態だな。だから男は嫌いだ」
「おいおいおい、お前が男嫌いだろうがなんだろうが、知らねえけどさ。お前が聞いてきたから真摯に答えてるんだろ?それになあ、むしろ、変態じゃねえよ、それが健全だって。変態っていうのはさ、靴にしか勃たないとか、小学生にしか勃たないとか、そういうのをいうの!!」
あ、顔赤くしちゃった。
そうだよな。部活に打ち込んできた女だったら、こんな話、したことないだろうな。
俺がやや後悔したとき、月詠は言った。
「いや、確かに、銀八、お前の言ってることは正しいな。変態は取り消す。お前は健全だ」
いやいや、本当にこのコは真面目だねえ。
真面目で、正義感も強くて、だからこそ男にとっては近寄りがたい女子になっているんだろう。
俺はこのとき初めて、月詠という人間にちゃんと触れ得た気がした。