第17章 人の不幸は蜜の味(銀八side)
「俺、あんたに怒られるようなことしたっけ?」
歩きながら聞くと、
「ユカリがお前を呼んでいる」
とにべもない返事が返ってきた。
ユカリ?ユカリ。
一応俺、同じ学校の女子には手を出さないようにしているつもりなんだが(愛里先生除く…っていうか、愛里先生は「女子」じゃねえよな)、どっかで間違ったか。
でも「ユカリって誰?」とでも聞くと、そのまま殺されそうだったから、黙っていた。
一年生の頃は、屋上でよく授業をさぼっていた俺だが、今年度に入ってから、そういうことはほとんどなくなった。
むしろ今の俺にとって屋上は、愛里先生に直結する思い出の場所でもある。
初めて先生にキスしたのもここ。
2人で遠い花火を眺めたのもここ。
あーあー。
こうやって屋上に俺を呼び出すのが、愛里先生だったらいいのに。
隣に月詠がいることも忘れて、俺はそんなことを考えていた。