第17章 人の不幸は蜜の味(銀八side)
それから二日経って。
「お前が坂田銀八か」
昼休みに俺がパンを食ってると、同じ学年の月詠とかいう女が教室にズカズカ入ってきて言った。
「そうだけど」
「ちょっと屋上に来い」
「は?」
「四の五の言わずに来い」
この月詠という女、この学校の数少ない強豪部、ハンドボール部のキャプテンである。
彼女率いるハンドボール部は、既に来年の都大会優勝、インターハイ出場が確定的だとの噂がある。
黙っていればなかなか美人なのだが、かつて試合中に相手チームの選手と接触した際にできたという大きな傷があり、彼女を取っつきにくい存在にしていた。
姉御肌のようで、女からは年上年下関係なく慕われているが、男としては、ちょっと怖ェ。
そういう女だったから、辰馬も全蔵も、「気の毒に。行きて帰ってこられると良いな」という顔で俺を見た。
おいおいおい、何だよ。
無事生還してやるぜ。