第17章 人の不幸は蜜の味(銀八side)
奥のベッドにはカーテンが引かれていて、体調の悪い生徒が誰か休んでいるらしい。
俺は音を立てないように、そうっとドアを閉めた。
だが。
俺の耳に入ってきたのは、ギシギシ鳴るベッドと、ひそめられた会話だった。
「ん……、ダメ……保健の先生戻ってきちゃう」
「保健の先生は、今会議だからしばらくは戻って来ないよ」
「え?先生、それわかってて来たの?」
「お前の方こそ、俺が空きコマなのわかって授業抜けたんだろ」
「だって……」
「こういうことしたかったんだろ」
「だって……先生を独り占めしたいんだもん」
「可愛いな。お前のそういうとこが好きだよ」
え?
何コレ。
保健室をラブホ代わりにしている淫行教師と淫乱女子高生がいるんですけどォォォォ!
俺は思わず上げそうになった声を必死で殺す。
しかも。
しかも。
しかも。
この教師の声には聞き覚えがある。
忘れるものか。
忘れられるものか。
あのときと同じだから――。