第17章 人の不幸は蜜の味(銀八side)
たぶんそんな前夜の陶酔が残っていたせいだろう。
体育の授業中、俺はバスケットボールを受け損なって、右手を痛めてしまった。
ボールを投げた辰馬も心配そうに寄ってきた。
普段なら軽くこなせるはずの動き。
何だか、先生と過ごした翌日は、いっつも保健室の世話になる。
悪いことは続くもので、体育の次の授業中、巻いてもらった包帯がほどけてしまった。
俺も左手一つで巻き直せるほど器用じゃないし、まともに右手が使えないから、ノートも取れない。
俺は授業の途中だったけど、もう一度保健室に行くことにした。
保健室のドアには、すげなく「席を外しています」の札がぶら下がっていたが、幸い、ドアノブを回すと、ドアに鍵はかかっていないようだった。
中で待たせてもらうとするか。
俺は静かにドアを開けた。
だがそれが、俺にとんでもない切り札をもたらすことになるとは。
偶然ってすげえ怖いもんだ。