第4章 再契約(銀八side)
で。
90点獲れたら愛里先生と付き合えるなんて契約して、頭がお花畑になった俺は、ガラにもなく、ちゃーんとテスト勉強したんですけどね。
したはずなんですけどね。
こう、モノゴトは俺の思う通りには動いてくれねーなっていいますかねェェェ。
国語のテストの前日、晋助から電話があった。
「おい、銀八、お前どこにいる?」
「どこにいるって、家だけど?」
「頼む、お前今日シフト入ってねえけど、何とか来られねえか」
「え?」
「大変なんだよ。寮の昼飯にあたった奴が続出してよ、まともに働けそうな若いのが俺しかいねえんだ」
「は!?あたった?食中毒か?」
「そうらしい。頼む、俺1人じゃさすがに回せねえ」
俺に頼み事をする晋助なんて珍しい。つーか、長きにわたる腐れた付き合いの中で初めての気がする。それだけで、危機的な状況であることはうかがえた。
「…悪いが、早めにあがらせてもらうぞ」
「恩に着る」
まあそんなわけで、晋助に頼まれてバイトに向かった俺。
日頃バイト先に世話になっている責任感だけでかけつけた俺に、どうしてこう神様は試練を与えてくれるんかね。
こんな時に限って、はしゃいだ客に強い酒を呑まされ、俺はフラフラになった。
愛想笑いを顔に貼り付けてはいるけれど、客の話は左から右に抜けていく。
左耳と右耳の間には、脳みそじゃなくって、ちくわが入ってるんじゃねえか、っていうくらいの抜け方だ。
「おい、お前明日早いんだろ、もう上がっていいぞ」
あまりにも俺がボーッとしているのを見かねてか、これまた珍しく、晋助がかばうように俺に声をかける。
「ん…」
「足元フラフラしてるじゃねえか」
「ちょっと睡眠不足だったからかな」
「とにかく上がれ」
俺はその言葉に甘え、フロアの奥のスタッフルームに入った、はずだった。
だけど、そこから、記憶がない。