第3章 契約完了(銀八side)
「じゃあ!」
俺は愛里先生の手をとった。
いきなりのことに驚いたのか、先生は手を振りほどくこともせず俺の顔を見た。
俺は眉と眼を一生懸命近づけて、ビジネス用の「キリッ」とした顔を演出する。
「俺がキス以外も初めての生徒になりたいんですけど!」
「は?」
「俺とキスしてくれたってことは、俺のことをセックスしたくない相手とは思ってないってことですよね?」
「は?」
「期末テストで俺が90点獲ったら、俺と付き合ってくれますか?俺今彼女いないんで」
「は?」
先生のテストは難しいというのが校内でも有名だ。90点も獲ったら、学年トップの可能性も出てくる。
しかも俺の成績は、いつも赤点前後。進級ギリギリの教科もあったくらいだ。
だから、自分がかなり無謀なことを口にしたことは、わかっていた。
「あのう。私に彼氏がいないの前提ですかね、坂田くん」
「いや、先生に彼氏いても別にいいっす。…そいつより俺のこと好きにさせるから」
さらにビジネス用のきらめきを作る俺。
「…わかった。90点獲ったら、坂田くんと付き合ってあげる」
ため息とともに吐き出された言葉だったけど、俺は有頂天になった。
「やたっ!マジで!?」
まあ、先生が本気で受け止めてくれてないのはわかるよ。
俺が90点獲れるなんて思えないし。
わかってるけどね。
ちょっとはさ、高校生活にスリルと興奮があっても、いいんじゃね?