第15章 秘めごと再び(銀八side)Rー18
そうやって、湯船の中でもしたあと、俺はぼうっとしている先生に声をかけた。
「先生、俺が髪の毛洗ってあげる」
「え?」
「いいからいいから。座ったままだから、目をつぶっててね」
先生を座らせ、髪の毛にシャワーをかける。
シャンプーしながら、マッサージをしてあげる。
「ん……気持ちいい。こんなことも枕営業の一環なの?」
「そうじゃないって。施設で子供たちと一緒に風呂に入るとこうやってあげるの」
「……そっか。だから上手なのね」
「才能ありますかね?」
「あるんじゃない?気持ちいいよ」
「俺とのHと、どっちが気持ちいい?」
「……」
「あ、ごめんなさい。怒らないで!無防備なトコつかまないで!」
「Hできなくなりたいの?」
「違います違います。まだ俺若いんで、もっとHしたいです……先生って、やっぱりドSですよね。容赦ないっていうか」
「そう?」
そうだよ。
何ですっぴん見せるのが恥ずかしいのに、男の股間握るのは大丈夫なの?
ホント、女心っていうか、先生の心はわかんない。
ああ、そうか、先生の心なんて、全然つかめてないんだよな、俺。
あの教師のどこがいいのかも、俺全然わかんないし。
それでも俺の話をちゃんと聞いてくれる先生のことが好きだ。
先生に話を聞いてもらっていると、こんな俺でも存在してていいんだって思える。
そして先生がそれに応えてくれるから、ずっと話していたくなる。
先生が誕生日プレゼントにくれた本の中には、年上の女性とつきあう高校生が主人公として登場する。
どうやって主人公は、その年上の女性とつきあうことができたのだろう。
そのあたりの肝心なことは全然書いてない。
書いてあったら書いてあったで、そうできない自分に焦りを感じるかもしれないけれど、とにかく主人公のことがうらやましかった。
でもその「うらやましい」という正直な感想を、先生に告げることがちょっと、いやかなり怖い。
俺の先生の思いを見透かされてしまいそうで。
見透かされた上で、先生に離れていかれたら、俺はもう、どうやってこの先生きていけばいいのかわかんなくなる。