第14章 俺の知ってるあいつと俺の知らないあいつ(晋助side)
俺はその後、アウトローな生活を送るようになり、勘当同然となって、ホストをしている。
あのバカは剣道をやめてしまって、施設の横の、松陽先生の持ち家だったところに住みながら高校に通っているのだという。
実入りのいいバイトとして俺の店を紹介したら、結構その気になってホストのバイトを続けるようになった。
そこそこ器用だし、もしかすると、家族がいなくて施設で育っているということが影響しているのかもしれないが、銀八は昔から人の気持ちをよく読むタイプだった。
俺の場合はそれでケンカになることも多い。
でも客の多くは気分よく飲めるらしいから、奴はホストに向いているように思う。
ただ、死んだ魚のような目は変わらない。
むしろ最近では、女から金を巻き上げることへの抵抗を少なくするために、あえて表情を殺しているのではないかとさえ思うようになった。
仕事であってもそうでなくても、キャバ嬢とか風俗のお姉ちゃんにもかなりモテているみたいだが、今銀八の前に座っているのは、水商売の匂いはしない女だ。
大学生ではない。
もう少し年上だろう。
俺の角度からは顔がよく見えないが、メガネをしているのがわかる。
そして銀八は、いつもとは別人のようなキラキラした目で女のことをじっと見ている。
気に入らないものがあれば、それがたとえ家族であろうと壊してしまえばいいと思う俺と。
それでも手の届く範囲を大事に護ろうとするあのバカ。
同じ時間をともに過ごしたようでいて、本当はずいぶん遠いところにいるのかもしれない。
レジに向かいながら、ソウヤさんが言った。
「あんな可愛いギン君見たの初めてだね。彼女のこと、すごく好きみたい」
俺も同感だった。
「ああいう死んだ魚の目のバカには、しっかりした彼女が必要ですよ」
「うん、ボクもそう思う。ちらっと見えたけど、結構可愛かった。ラブラブな年上の彼女、ちょっと羨ましいね」
ソウヤさんは少し淋しそうに笑った。
ソウヤさんが、人目をはばかる関係の相手と一緒に住んでいることを、俺は以前から聞いていた。
全く、可愛い年上の彼女と一緒にファミレスでデートなんて、幸せなことだぜ。