第14章 俺の知ってるあいつと俺の知らないあいつ(晋助side)
中学二年の秋。
文化祭の親善試合で、俺たちの剣道部は夜兎中の奴らと対戦した。
今から考えれば、どうして文化祭にわざわざガラの悪い奴らを呼ぶ必要があったのか、かなり疑問だ。
だが、そのあたりの詳しいことは、生徒だった俺にはわからない。
ただとにかく、反則スレスレの攻撃をしてくる奴らに親善試合は台無しになった。
いや、最終的に台無しにしたのは、俺だ。
副将が卑怯な手で倒され(文字通り倒された)、一触即発の状況の中で、あのバカは意外にも冷静に試合に臨んだ。
もう負けは決まっていたのにも関わらず、反則スレスレの攻撃も全部防いで勝った。
後から聞いたら、あの日は珍しく松陽先生が見に来ることになっていたのだという。
松陽先生に自分の闘っている姿を見せたかったらしい。
あのバカらしい発想だ。
乱闘は、試合直後に始まった。
夜兎中側の観客が、変な野次を飛ばしたのがきっかけだったと思う。
今となってはほとんど記憶なんてない。
俺は冷静さを失い、防具もつけずに飛びかかっていき、相手の竹刀が左目に当たった。
あ、ヤベえな、一瞬そう思った。
近づいてくる竹刀の先がスローモーションのように見え――それが俺の左目が見た最後の映像となった。