第14章 俺の知ってるあいつと俺の知らないあいつ(晋助side)
俺が銀八と出会ったのは、あいつを引き取って育てていた松陽先生の剣道の稽古場だった。
その頃松陽先生は、剣道とそろばんと綴り方(要するに作文だ)、の寺子屋式の私塾を開いていた。
施設の子供たちに混じって、一般の子供たちも多く通う。
松陽先生の人徳はもちろん、武道の精神を学べるということで、評判もかなり良かったのだろう。
始めこそ親に嫌々行かされていたが、剣道の稽古は楽しく、友達も増えたあとは進んで通うようになった。
その中の一人が銀八だった。
友達、いや、あれはケンカ友達だ。
俺たちはしょっちゅう小競り合いをしては、周りに止められていた。
どっちが出されたヤクルトを早く飲んだとか、手を使わずにヤクルトが飲めるかとか、ヤクルトを片手で何本持てるかとか、そういうくだらないことだった気がする。
アレ、ヤクルト率高ェな。
まあいいか。
そんな関係は、中学生になっても続いていた。
俺たちと同じように剣道仲間だった桂(あいつは今留学中だという)と、親の仕事の関係で転校してきた辰馬、この四人でよくつるんでいた。
小競り合いは相変わらずだったし、銀八の施設の先輩にくっついて、ちょっと悪いコトも教えてもらった。
(それが今の俺の生活基盤になっているのだから、人生はおもしろい)
あんなことがなければ、今頃俺も、銀八と同じように、普通の高校生活を送っていただろう。