第13章 特進クラス争奪戦(銀八side)Rー18
そういうわけで、俺なんかに松陽先生が残してくれた財産を使う価値があるのかどうかは甚だ疑問だけど、大学という選択肢もアリだとなった以上、勉強へのモチベーションはかなり上がった。
もちろん現代文や古典は、勉強にかこつけて愛里先生と一緒にいられるからという理由が大きい。
相変わらず「抜け駆けするな」と辰馬や全蔵もついてきたが、先生は俺たちを邪険に扱うこともなく、面倒を見てくれていた。
時には、俺たちに解かせた問題を丁寧に添削してくれることすらあった。
俺は調子に乗って資料室をたびたび訪れた。
もしかして先生は、恐喝するような形で強引に関係を持った俺のことなんか、顔も見たくないって思っているのではないか、という思いも消えてはいない。
だけど俺を資料室に迎え入れてくれる先生の顔が、そんな疑問を吹き飛ばしてくれるような笑顔だったから、正直俺はそれに甘えていた。
俺がホストとして客に笑顔を振りまいているように、先生もまたビジネスとして笑顔を見せているだけかもしれない、と思わないでもなかった。
それでも俺はその嘘の笑顔にだまされることを選んだのだ。
勉強に時間をかけてバイトにも全然行かなかったから、体調でも悪いのかと心配して晋助が連絡をよこした。
「進学を考えているから、これからバイトにはほとんど行けない」と告げたら、ものすごく驚かれた上、「お前を合格させる学校があると思えねえ」と、真剣に言われた。
うるせえな。
わかってるよ。
それをどうにかしようってんだよ。