第13章 特進クラス争奪戦(銀八side)Rー18
「特進クラスに入らないと、愛里先生に習えなくなる」
俺はぽつり、とつぶやいた。
「どういうことじゃ」
「愛里先生、来年は特進クラス担当するって言ってた」
「ああ、それはたぶん本当だな」
全蔵もうなずいた。
「俺は、部活の先輩に驚かれたことがある。姫川先生は特進クラスを担当することが多くて、俺らみたいな一般クラスを担当するのは珍しいんだそうだ」
「今年は産休の先生の代わりで入ったって言ってた」
「そうか、じゃあ来年はその産休明けの先生が一般クラスを担当するってことだな」
「金八、お前、愛里先生に習うために特進クラスに入りたいんじゃな」
「……」
「お前、そのままホストになるんじゃなか?大学進学を考えたら特進クラスの方がいいに決まっちょるが、就職するんだったら、その必要もないじゃろ」
「……いや、ホストとして就職するつもりがあるわけじゃ……」
でも、そうだ。
俺は大学進学なんて考えてない。
経済的にそんなことできると思えないからだ。
でも、特進クラスに入れば先生の授業が受けられる。
「そもそも銀八、お前の成績で特進クラス入れると思えないんだが」
全蔵が至極当然のことを言う。
「うるせえよ」
「でも、あの教師にあそこまで言われたら、血が騒ぐの!」
辰馬はニヤニヤした。
「銀八、俺は決めたぜよ。特進クラスに入って、あの教師を見返してやるきに!そしたら姫川先生にも習えるんじゃろ。仕方ないから一般クラスの銀八にも姫川先生の授業がどんなふうか、事細かーーに教えてやるぜよ」
「何だよソレ」
「ははは。今日はこんなこと言った、あんなこと言った、って、毎日銀八に報告するのか。銀八のくやしそうな顔を見るのは楽しそうだな」
全蔵までがそう言う。
「お前ら何なんだよ!」
「くやしいのか」
「……」
「くやしかったら、銀八も特進クラスに入ってみるぜよー」
ああ、こいつらほんとに腹立つな。
銀さんはまだ、勉強で本気出してないだけだっつうの。
本気出せば、特進クラスなんて、ちょろいもんだっつうの。
た、たぶんだけど……。