第12章 銀の雫(girl's side)Rー18
当日、ホテルの部屋までの記憶はあまりない。
ただパフェを頬張る彼の顔がとても幸せそうだったのを覚えている。
年相応、いや、まるで小さな子供のように無邪気な顔でパフェを口に運んでいた。
これだけ幸せそうに食べられれば、パフェ冥利に尽きるだろう、と、よくわからないことを思った。
シャワーも浴びずに押し倒されたときには少し驚いたけれど、それも若さなのだろう。
ついついしてきてしまった指輪だけ外して、彼に応えることにした。
指輪を外したのは、それが礼儀だと思ったからだ。
別の男にもらった指輪をしている女を蹂躙するのが好き、そういうタイプの男もいるかもしれないけれど、まあ普通はそんなものが目に入ったら、気分が萎えるのではないかと思う。
意地悪な言葉を次々に囁かれながら、快感を引き出される。
彼の身体の下で、何度も何度も達しながら、身も世もなく嬌声をあげる。
丁寧で、しつこくて、いやらしくて。
愛されているのではないかと、勘違いしてしまうくらいの。
唇を解放されて、悦楽の波に身をゆだねながら見上げると、銀色の前髪から、ぽたり、と汗の雫が頬に垂れた。
「汗かいてるのね」
額を手でぬぐいながら言った。
本気で私の身体を抱いてくれているのが伝わってきて、嬉しかった。
「うん……先生の中が気持ちいいから」
無邪気な言葉に思わず微笑む。
「気持ちいいの?」
「うん、このまま死んでもいいくらい」
「何言ってるのよ……」
「だって本当にそう思ってるんだもん。……ねえ、先生も気持ちいい?」
高校生とは思えないような女の抱き方をしているくせに、子供みたいな質問をする。
そんな、ちょっとアンバランスなところが魅力だと、彼自身は気づいていないだろう。
私の他に、あと何人この魅力に気づいている女がいるのだろう。
わからない。
わからないけれど、今は私だけが、この滴る銀の雫を味わっている。
「うん……気持ちいい」
そしてまた、快楽に墜とされていく――。