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【銀魂/3Z】国語教師の作り方!

第12章 銀の雫(girl's side)Rー18


銀髪の少年は冷ややかな笑いを浮かべてこう言った。
「誰にも言わないでおいてあげてもいいですよ。俺、口堅いから」
私はその言葉に縋り付いた。
「ほんと……!」
だが、彼が提示してきたのは交換条件だった。
「1日、先生を俺の好きにさせてくれたら、黙っててあげる。墓場まで持って行ってあげますよ」
自分の立場を守るために、私がどこまでのことをしてみせるのか、それを楽しむような口調だった。
「10月10日がいいな、文化祭の代休だから」
さっきあの男が一方的にとりつけた日を覚えていて、わざと指定してきた。
「俺、10月10日が誕生日なんです」
本当なのだろうか。
公的な記録をいくらでも見られる立場の教師に嘘をつくとも思えないが。
「だから、その日1日何でも言うこと聞いてくれますよね。まずは、誕生日プレゼント代わりに、女性連れじゃないと入れないお店で、有名なパフェ食べさせてください」
呆然としている私の身体を彼の腕が抱きしめた。
一瞬、甘い香りがする。
「そのあとは、誰にも邪魔されないところで、先生をいただきます」
抱きしめたまま、彼は耳元で囁いた。

この腕の中で、こんな睦言を耳元で囁かれたら、どんな気持ちになるだろう、と考えたことがある。
もうずいぶん前のことだ。
いざ自分がその立場になってみると、なんと複雑な気持ちがすることか。
彼の周りにいる女性たちは、この声を聞くために対価を払う。
そしてこの私は、情報を奪われてこの声を聞かされている。

笑顔を向ける彼を見ながら、私は思わず唇を噛んだ。
たとえ一時であっても、彼を自分が独占しているという嘘にだまされてしまえば幸せなのかもしれない。
だが、先に対価を奪われてしまった私は、甘美な嘘を味わうことができない。
恐ろしく無邪気な笑顔が私の心を刺す。
人のおもちゃに子供が興味を惹かれるように。
他の男が遊んでるおもちゃで俺も遊んでみよう、という、ただそれだけの。
でも、たとえ私に対する軽蔑しかそこになかったとしても。
彼との細い細い絆を切らないようにするには、彼の提案を飲むしかないのだ。

いや、違う。
それすら欺瞞でしかないだろう、と本能が理性に囁きかける。
本当に、自分が彼に抱かれたいと思っていないとでも?

ああ、結局。
理性も本能も彼の腕に抱かれたまま、答えるしかないのだ。
「わかった」
と。
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