第11章 10月10日限定彼女(銀八side R-18)
たぶん、2人ともそのまま落ちてしまったのだろう。気づいたら空が暗くなっていた。
先生の無防備な寝顔がすぐそばにあった。
ほんと幸せでおかしくなりそうだ。
2人の身体に毛布をかけ、そっとまぶたに口づける。
「好きだよ」
そっとそっと、つぶやく。
今まで口にしたことのな想いを、こっそりつぶやく。
先生はまだまどろみの中にいるのだろう、俺の首に腕をからめてきた。
本当の恋人同士みたいに。
口づけながら、
「好きだよ」
と再びささやく。
「ん…、…す、き……」
寝ぼけて、俺を好きな男だとでも勘違いしているのか、先生が応えた。
先生から、好き、と言われる、それだけで幸せすぎて泣きそうになる。
もう少し、もう少しだけ、このままでいたい……。
もう一度目を覚ました俺がシャワーを浴びて戻ってきても、まだ先生はそのまま寝ていた。
好きな男を守るために別の男に抱かれた、そんな悲愴感など欠片もうかがえないような顔で。
ベッドサイドに目をやると、先生の指輪が、俺の立場を揶揄するかのように鈍く光った。
お前のものじゃないんだよ、小さな輪っかにそう宣告されているようだ。
俺はスマホに手を伸ばし、そっと添い寝すると、気づかれないように写真を撮った。
こんなふうに、アイドルや女子アナといった人たちの流出写真は撮られているのだろうか。
卑劣な行為をしている自覚はあった。
先生は目を閉じてあどけない表情で寝ているけど、知っている人が見れば、愛里先生だということがすぐにわかるだろう。
何も身に着けていない姿であることも。
そして相手の男が誰だかは、この髪の毛の色ですぐにわかるはずだ。
ごめんね、先生。
先生の心が手に入らない俺には、身体だけでも先生を自分のものにしていたいんだ。
先生が無防備すぎるのがいけないんだよ。