第1章 右手のみさんが
あいつがとうとう結婚しちまって
自分が止めなかったのが悪いくせに、会うことをやめたり冷たくしたりしていた。
それは確実に嫉妬からきたものだった。
それに、あいつを見ると『やっぱり俺にしないか』なんてことを言ってしまいそうだったから
旦那のことで相談がある。といわれて
もしかしたら別れたい。とでも言うかな?なんて期待したけど
もしも惚気混じりの相談だったら傷つくからと、それをも拒んで放置した
もうあんたに興味はないんだよ。と
自分が傷つかないようにあいつを傷つけたんだ。
どれだけ悲しかったかな、あいつは
俺たちはお互いが好き同士だってことは知っていた。
だからあいつは旦那のことなんか少しも好きじゃなかったはずだ、知っていたのに傷つけるなんて、俺は本当に最低だった。
言い訳ができるなら、それで俺のことを嫌いになってその人と幸せになれればいいのになんて思ってた
だけどその知らせは突然に、屯所に届いた手紙に書かれた
あいつが自殺したという知らせ
信じられなくてその日は何を考えていたのか覚えていない
かろうじて覚えているのは、目が覚めると顔や布団がびしょびしょだったということくらい。
次の日旦那の家は知らねぇから、あいつの親の家に行くと
いつもより目が腫れぼったくなっているあいつの母親が出てきた。
『…総悟くん!』
『嘘、ですよねィ?あいつが…死んだなんて』
『……嘘だったら…いいわね』
『…』
その時の俺はどんな顔をしてたのかな
おばさんのその言葉でやっと真実が分かって
ただたっているだけで涙がつーと静かに流れた。
『私たちの事情のせいで、あの子を総悟くんじゃない人と結婚させたりしなかったら』
『どういうことですかィ?』
『あの子は旦那にDVをされていたみたいなの…っだれにも、言えずに…苦しかったでしょうに…っそれで自殺を…』
それだけ言うとおばさんは泣き出した。
『っ…そんな…』
ほら、やっぱり俺のせいだろ?
あのとき相談を聞いてやっていれば…自殺なんてこと
謝りたくてももうあいつはいねぇ
抱きしめたくてももうあいつはいねぇ
いや、こんな俺、生きてても許してくれねぇか
『明後日、お葬式があるわ…来てあげてね』
『もちろんです』
合わせる顔がねぇけど
最後にあいつに会いたい
その日の晩も、俺は枕を濡らした。