第1章 右手のみさんが
わかってたんだ、んなこたァ
なのに、あいつに告白さえできずに、俺ァなんて臆病なやつだったんだろう
すきだから、好きだからこそ
言えなかった、もう少し大人になってからでいい。そう思っていた。
それがハズレだったなんて、その時は分かるわけなかったんだけどな
『総悟…私、結婚を申し込まれたの』
『…へぇ…、よかったじゃねェか』
『……、うん』
あの時、俺と結婚してくれ、とでも言えていたら
俺はあいつを泣かせずにすんだかな、
あの時、俺の方が絶対お前のことを愛してる。とでも言えていたら、俺はあいつを、
殺さずにすんでたかな。
「総悟、そろそろいくぞ」
「へい、わかりやした」
「…お前、まだ後悔してんのか」
黒い服で静かに涙を流すやつ、泣き叫ぶやつ、俯いてるやつがたくさんいる中で、早めに立ち上がる俺と土方さん。冷たいって思われてるかもしれねェが、長居をするのも気が引けた
「なんのことですかィ?」
「いや…別に、なんでもねぇよ」
「そうですか」
「あぁ」
嫌いなわけでもねェ、情がない訳でもねェ。ただ
居心地が悪ィだけで、最後そばにいたい。と、ふつうは思うかもしれねんだけど
罪悪感なんて言い訳で、本当に居心地が悪ィんでィ
でも、あの箱の中に、触ることさえできなかったあいつがいるのか、そしてこれから燃やされるのか
そう思うとなんだか悲しくなった。
「土方さん、俺ァ多分、を幸せにすることなんてできなかったんですよねィ、あの時好きだと言っていても、それを伝えていなくても」
「…、そんなこと俺にはわからねぇが、は少なくともお前といる時が一番幸せそうに見えたぜ、俺は」
「……そんなの」
「んあ?」
「いや、なんでもねェです」
「まぁあれだよ、お互いに、大切すぎたんだろ」
「…」
「肩が当たっただけで顔赤くしてよ、こっちが見てるだけで恥ずかしかったわ」
「…」
そう言うと土方さんはタバコの煙を吐いて少し長く瞬きをした。
俺の中ではあいつの死んだ理由は俺のせいだと思っている。
だから、罪悪感があるんだ。